「スウェーデンは理想郷ではない」という表題に引き込まれて読んだ。
―― 毎年一時帰国するたび、日本で、福祉大国の理想郷としてスウェーデンが語られることを苦々しく思っています。税金が高く、「高負担」は確かですが、「高福祉」には疑問点も多く、日本よりはるかにすぐれた社会という見方には賛同できません。
****** ▼ 追記記事 ▼ ******
例えば、就学前の「幼児教育」は存在しません。大多数の公共保育園は、預かった子供の安全を保証するのが仕事で、資格を持たない人が数多く働いています。小学校入学前に6歳児教育が1年間ありますが、イスに座る、鉛筆を持つ、アルファベットを書く、というレベルです。「将来への安心から貯蓄が不要」というのも、誤った解釈です。国民の多くは不安を抱えています。年金は物価や税金の高さからすれば、十分な額とは言えず、銀行は「将来、年金では暮らせません。若いうちに蓄えましょう」と積立預金を呼びかけています。しかし、月5万円のパート収入ですら3分の1を税金で持っていかれ、最高税率25%の消費税。住居・光熱・医療費、保育料も高く、普通の家庭ではお金が残りません。国民の多くは「可処分所得が少ないから貯金できない」のが現実です。
若者の犯罪増加、就職難、麻薬や性病の蔓延。さらにフルタイム労働に疲れきった母親、冷凍者ばかりの夕食。これらが理想郷なのでしょうか。 ――
ある国の実像というものは、一部分だけ見て全体像が判断できるものではない。
日本は総じて均質と見られているがそれでも、東京の真ん中と地方の田舎では一色では語れないように、どこの国においてもさまざまな模様を見せるのだと思う。
メディアによく取り上げられる福祉が行き届いたスウェーデンの姿は、嘘ではないだろう。
特に教育費、医療費、子育ての費用は、こんなものまで無料になるのかと驚いたという現地での体験談が多い。
高負担を国民はおおむね「自分の将来や子どもに返ってくるものだから」と是認していることも理解できる。その政策を進める政権が一応支持されているのだから・・・。
総じて、スウェーデンが福祉大国という顔に偽りはないのだと思う。
だが、「住民全てに平等な社会サービスの実現」という理念は、税金と社会保険料負担がGDP(国内総生産)の50%にも上り、財政難を招いている。
世界的な経済危機がスウェーデン経済に暗い影を落としており、カネが追いつかないのが現状だと言われる。
自治体によっては、財政が逼迫してサービスが低下していることもあるようだ。
たぶん、フス恵美子氏が投書で語る状況は、同じような生活実感を感じている人がスウェーデンの中で少なからずいるのではないかと思った。当たらずとも遠からずなのかな、と妙に納得してしまう。
異なった見方や意見があるのはむしろ普通で自然なことだ。
スウェーデン方式は、「高福祉が公的部門の肥大化をもたらし、財源である税負担が増加する。福祉国家は経済効率が悪い」という批判がある。
スウェーデン型が良い、いやアメリカ型が良い、といろいろな見方がある。
ただしひとつだけいえることは、将来の世代につけを回さないことだ。
現在、日本の福祉が比較的良いのは、自分たちで負担しないで子孫に負担を先送りしているからだと言える。