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のりこのスウェーデン研修日記 (2004年)
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8月12日 「さよならを言うとき」A
亡くなるその日まで、Ingrid(イングリッド)はMaud(モウド)といつも一緒に行動をしていた。盲目だったイングリッドを気遣い、歩くときも支えてあげながら「私の可愛い人」と言い、二人はとても仲が良かった。グループホームで生活していく上で、介護者はもちろん重要ではあるが、このような付き合い方の出来る友人がいるのはとても幸せなことだと思っていた。しかし、どちらかが具合が悪くなったりすればこの関係はどうなるのか、私は心配もしていた。その時が来てしまった。
亡くなったイングリッドは夜の間に運び出されたので、翌朝にはもう姿がない。職員はやはりモウドにはきちんと話をしようと決め、イングリッドの死を伝えた。最初は何の話をしているのか状況が飲み込めなかったようだが、2度目に同じことを伝えたときに、「まあ!なんていうこと!!」とやはり大きな動揺を示した。しかし、その数分後には「コーヒーが飲みたいわね」と言っていた。
モウドにイングリッドの死がどのように伝わり、影響を与えたのかは正直私には分からない。何処まで今の彼女に理解する能力があるのか、そして受け止めることが出来るのか。見た目には分からないが、彼女もかなり痴呆症状は進行しているはず。それでも何かしら彼女の中で変化があったのか。もしくは分からないままの方が幸せなのかもしれない。
美味しそうにコーヒーを飲むモウドの姿を見て例えようのない切ない気持ちになり、イングリッドの死で、ぽっかり穴が開いたように影響を受けてしまったのは、何より我々職員の方なのかもしれない。プロとしていなければと思いつつも、今だけはこの気持ちに正直に、そして忘れないようにしようと思う。私のスウェーデン語がつたないのを知ると、彼女は気を使って英語で話してくれた。そして冗談を言い合うといつも「ほっほっほ」と嬉しそうに笑った。
いろいろと、ありがとうね。楽しかったね。
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